食後のデザートという甘美な響きには、ときに魔法が掛かっているのではないかと思わされることがあります。週末の晩餐を締めくくるその食後のお楽しみへの期待が大きければ大きいほど、おなか一杯の下腹部に別腹という名の秘密の部屋(chamber of secrets)の開かずの扉がぐーっと音を立てて開きうるのですから。
とある晩餐を終えた私たちにもこの別腹なる秘密の部屋が現れました。その扉を目の前にして立つ私たちは、まるで新大陸を目指して大航海へと出航するコロンブスの一行のよう。そして少しばかりの冒険心と甘美な響きに背中を押されて足を踏み入れたるは、流山おおたかの森駅西口から徒歩3分にある新世界。
その名を「夜パフェ専門店」VIGOと言います。
終えるには惜しい楽しい晩餐に終着点を。食後のデザートとともに楽しい一夜の締めを迎えるべくそのお店の扉を開けることにしたのです。
電球が仄暗く照らす晩餐の終わりの始まり
別腹の扉の先に開かれたVIGOの店内は、いくつものエジソンバルブ電球が仄暗く店内を照らし、天井にはドライフラワーのスワッグが文字通りの華を添えています。テーブルに置かれたカトラリーのスプーンとフォークのシルバーたちは、天井からの電球の光の粒が落ちてはそれらを鈍く反射し、お店全体はシンプルながら洒脱な雰囲気に包まれています。
VIGOのロゴにも表れるエジソンバルブが残り少ない晩餐の時をくっきりと浮き立たせる傍ら、全てを照らしきらない仄暗さの陰影が、必要にして十分な隠れ家感を醸し出します。外を眺めれば窓ガラスに電球と自分の姿を映し返し、目に見えるけども行くことのできない世界の存在や晩餐の終わりが始まることをふと思わせます。
別腹という名の秘密の部屋が本当にあるのだとしたならば、こんなインテリアの中に隠れているのかもしれませんね。
VIGOの夜パフェ
VIGOのメニューは、それぞれのパフェに詩のような名前が付けられ、パフェの姿かたちがわかりやすく絵にまとめられています。手書きのパフェの絵は、オーダーをするときにあれこれと期待を抱かせてくれるのでどれを頼もうか目移りしそうになりますね。

メニューを頼むときにはどんなパフェかのイメージを膨らませる一方で、実はこのメニュー、パフェが届いてからは自分が今何を頂いているかの答え合わせができるという一粒で二度おいしいデザインとなっています。
非常にユーザーフレンドリーなメニューとなっていますから、庶民のイタリア食堂のキッズメニューで鍛え上げられた間違い探しファンにとっても実物と絵を比べながら答え合わせしてみてください。そりゃもう10個と言わずに100個でも。
オレンジの夜パフェ「柑橘のやすらぎ」

夜の〆パフェにさっぱりとした後味を求めるならばやはり柑橘系パフェの出番でしょう。
レモングラスのジュレやオレンジなどの柑橘類にマスカルポーネチーズやキャラメルアイスやアールグレイのパンナコッタを組み合わせたパフェです。柑橘のさっぱりさとチーズの濃厚さが順に楽しむことができます。
パフェ自体ひさしぶりに食べたものだから、小麦でできた綿状の生地のカダイフを割ってパフェグラスに「こんにちは!」するのに躊躇してしまい、あやうく上のフルーツ全部食べてからグラスの中を食べ始めそうになりました。このパフェの場合は、いきおいよくカダイフを割ってから、少しずつ全てをつまむのが私的にはパフェの美味しい食べ方ではないかなと思います。
杏の夜パフェ「杏姫」

夜パフェには杏も合いますね。アプリコットのコンポートが中心に添えられた杏姫の周りにはバニラアイスやフランボワーズソース、梅ソーダジュレ、マスカルポーネムースが並びます。アプリコットのコンポートを一つ口に含んでは肉厚の食感にソースやムースを添えて楽しみました。一般的な料理に比べても格段に使用食材が多いパフェだからこそ、自分だけがみつける食べ方のマッチングの妙があります。
抹茶の夜パフェ「趣」

趣の名の通り、和のテイストが薫るパフェ。木と苔玉を思わせるビジュアルが可愛いかったです。上段の抹茶の大地から中段のピスタチオアイスに辿り着くためには、上部地層を為すシュトロイゼの層をスウェーデン式サウンディング試験よろしく上手く貫通させてあげるコツが必要です。パフェには上昇負荷なんてものはないので、上部を食べては下部にもいっちゃうというのも趣の一つですし、確実に一層一層を順に踏破して食べていくというのもまた趣きですね。
抹茶の渋さをシュトロイゼの甘さが引き立て、それにピスタチオアイスやチョコレートムースが続きます。抹茶の渋みをバリエーションの異なる甘さのマリアージュで楽しめますし、適度なボリュームもありますので別腹の空きが大きめの人にもおすすめです。心地よい甘さのバリエーションに〆ながらもう一杯のお酒が進むパフェにもなるでしょう。
よく見たらメニューに載っていない謎のイチゴパフェ

「これ何だったんだ?」と後々見返すとメニューの絵には載っていなかった苺のパフェ。苺がいっぱい入っていて爽やかな甘酸っぱさがありました。苺があると安心できますよね。慎重派のぼくとあなたに。
そして晩餐の夜を締めくくる
別腹の扉を開けた晩餐の夜は、 各々のパフェを時折シェアして感想を言い合ったり、晩餐の話の続きを楽しんだりと夜の余白を余韻に変えて甘さとともに締めくくることができましたとさ。
アクセス
店名 | 夜パフェ専門店「VIGO」 |
アクセス | 流山おおたかの森西口 徒歩3分 |
住所 | 〒270-0128 千葉県流山市おおたかの森西1-9-7 2F |
予約TEL | 04-7197-4287 |
MAP
北海道発症の夜パフェ文化を流山にも
雰囲気のある店内で食後のスイーツとともに晩餐の終わりの始まりを迎えられるということ。それが流山の街でも楽しむことができるということに夜パフェ、締めパフェ文化の確かな広がりが感じられます。
北海道発祥のこの夜パフェ、締めパフェ文化というものを個人的には結構気に入っていて、お酒の後にスイーツを頂くというのが粋な振舞いだと感じています。終えるのには惜しい宴の晩にお酒でもラーメンでもなくお店を変えてパフェを頂き、辛さでもしょっぱさでもない甘さを最後の余韻に残そうとするのが、その日をよりよく締めくくろうとする願いのようでなんだか良いのです。
以前にすすきので夜パフェの派生形、夜アイスの名店「ミルク村」を訪れたときにこの夜の甘美な洗礼を浴びたのですが、大の大人(それも全員おじさん)を連れ沿って子供のように夜のおやつを頂く姿は、それはとても微笑ましいものでした。
この夜パフェ文化を流山にも作っていこうとするのがVIGOであり、流山の地で夜パフェを待ち望んでいた方々の思いを一手に引き受け、よりよい晩餐の締めの場を提供してくれています。
週末の晩餐にパフェを頂きたくなったら是非いらしてください。
どうでしょうか。今夜あたり。