秋分の日を過ぎると、秋がにわかにやってきます。
早朝の指先に感じる今までの暑さや涼しさとも異なる冷たさには、春以来半年ぶり2回目の懐かしさが漂い、樹木に目をやれば色付き始めた落葉樹に季節の移り変わりをハッと感じさせられることが増えてきます。
午後5時を過ぎたら外が暗くなる陽の短さを含めこれらの秋らしさが一斉に「やあやあ我こそは秋の郷愁なり~」の名乗りを挙げてお構いなしにノックしてくるので、「各々方、もう少し順番に並んでやってきて頂けませんかね。」と無理めのお願いを物申したくなったりもします。
とは言え、季節は一斉に変わるものでこちらの都合を待ってくれるなんてことも無いものです。ならば芋が美味い、栗が美味い、米が美味い、なんかうまいの秋のグルメコンボをもってして「食べ物が美味しいのも秋なのだ。」「それでいいのだ。」とバカボンのパパのような朗らかさとともに季節の変わり様を迎え入れてしまう。そんな立ち居振る舞いをするのも一つの手でしょうか。郷愁ばかりが秋では無いはずですし、なにぶん私食いしん坊だもんで。
かつてモンティパイソンは「always look on the bright side of life」と物事の良い面を見ることを口笛交じりに軽やかに歌い上げました。この秋の訪れにも郷愁だけではない「実りの秋」という心の晴れる美しい面(bright side)を見つけることができたならば、秋の各々方のお構いなしのノックに対しても心のドアを開いて迎え入れられるようになるのかもしれません。
今日はシルバーウィークの最中、奥手賀を訪れた話を一つ取り上げて「実りある秋」探しに目を向けてみることと致しましょう。
奥手賀 is countryside
まず奥手賀について簡単に紹介しておきましょう。奥手賀とは、柏市、我孫子市にまたがる手賀沼の東端、曙橋を過ぎた一帯を指しています。このエリアには、手賀沼周辺に居を構えた白樺派が愛したであろう自然や里山等の手賀沼の原光景が依然として色濃く残っていて、近年はキャンプやグランピングができるスポットとしても注目されるようにもなってきました。私の住む流山からは車で30-40分程、20km前後の時間と距離で行ける場所にもかかわらず、北関東や東北感が溢れる田園風景と古い民家が残る里山の眺めは、ノスタルジーを想起させます。
また旧所名跡として、旧手賀教会堂という首都圏で最古となる教会堂が残っていますからご訪問のほどを。茅葺き屋根造りの教会に入れば漢字で書かれた聖書を持つ世にも珍しいイエスのイコン(聖画)や、洗礼のための木造の桶等が展示されています。アーチ窓からのぞむ奥手賀の光景は、唯一にして無二であり、往時の信仰にもきっと想いが巡ることでしょう。
1年のうち春と秋、半年だけ開く園芸店 harumienへ
こちらの旧手賀教会堂から足を延ばして徒歩5分程のところに、奥手賀に来たらぜひ訪れたいお店のharumienがあります。harumienは、2021年5月に奥手賀の地に移転してきたのですけれども元々は流山市青田の住宅街にharumien aotaとしてお店を構えていました。流山通の方の中には、聞き覚えのある方もきっといらっしゃることでしょう。
そしてこちらののharumien、1年のうち春と秋の半年だけお店が開くというちょっと珍しい園芸店なんです。
店舗情報
harumien
公式インスタ https://www.instagram.com/harumien/
harumienの植物 @harumien.no.syokubutu
harumienの雑貨 @harumien.no.zakkaOPEN 4-6月 10-12月
10:00~17:00
定休日 月曜日 木曜日〒270-1465 千葉県柏市手賀787−1
harumien公式インスタより引用
OPENを告げるボードの下には小さく4,5,6,10,11,12月の字が並びます。それは春には花が咲くように秋には実りがあるように物事には頃合いがあり、そしてharumienには営業時間ならぬ営業期間があることを静かにそして確かに告げているのです。
春、秋とは植物の充実する良い時期ですし、お客さんにも良い時期に来てもらいたいという気持ちの現れなのかもしれません。機会があれば真意の程をお店の方に聞いてみようと思います。
アクセス
流山からの最短ルートでharumienへ行く場合、最短経路でナビを任せると「だいじょうぶ?この道で」的な感想の漏れる里山の細道を抜ける箇所がありますのでご注意をば。できれば道幅が広い旧手賀教会堂側から回り込むのがよいですから、上記のgoogleマップのルートをおすすめします。
車で行くのをおすすめしますけれども、テガイチ(手賀沼一周)をする自転車乗りや、ランナーにとっては人力移動圏にもなるでしょう。
しっかりとそこにある。植物と雑貨が見つかる素敵なお店
庭が園芸店ならば、
お店の入り口を迎えてくれるのは、赤い実の(たぶん)ウメモドキ。秋の実りを伝える赤い彩りがお店の前に広がります。
そしてウメモドキの木を過ぎてこじんまりとしたharumien入り口の手作りのゲートをくぐると奥手賀の里山の風景は、一瞬にしてどこか異国のcountrysideのガーデンへとその姿を変えるのです。
それは都心のショップでは決して醸し出すことのできない里の空気を纏いながら、褪せたもの、古きものにも手入れすることで増す喜びがあることを伝えてくるようでした。カントリーガーデンの庭造りのお手本になりそうな園内には、もちろん園芸店らしく草花や鉢も並びます。
後期営業が始まったばかりの10月初頭の訪問でしたから「お花がまだちょっと少ないんです。」とはお店の方の談でしたけれども、花木はどれも見応えがあります。「ここから秋の花のパンジーやビオラに加えてお楽しみの変わり種も11月から入荷してくる予定なんです。」とも教えてくださいましたから、秋が深まればさらに品揃えが充実すると思うと再訪の楽しみが増えます。
品揃えはDIY店等の総花的なそれとは対極にあって、セレクトショップ的な志向を持って選び抜かれた植物が並んでいます。harumienの雰囲気に沿ったお気に入りがきっと見つかることでしょう。
古家は雑貨店なのです。
店舗外側の園庭がいわゆる園芸店的な品揃えだったものに対して古屋を改造して作られた店舗内には、大小様々な雑貨の品が揃えられています。
古屋から陽の光が店内にやわらかく射すさまに、古いランタンに、古時計や照明に、そう店内に全てに語彙力の追いつかない「ああ、良い。(推せる!!)」が溢れています。
それはまるでジブリ映画「耳をすませば」劇中のアンティークショップ地球屋が「奥手賀に実在した。」と思えてくる程なのです。
猫のバロンはいないけど足を組んだナイスなひつじの置物との出会いがあり、雑貨屋さんでの運命的な出会いをするという実績を遂に解除することができ大満足でした。
また店内にはびんコーラ、びんバヤリースの取扱があるので一息つくこともできます。
実りの秋はここにも、どこにも。
浮き世の由無しごとにあれこれと振る舞わされることばかりの昨今、ともすれば口から出る言葉は願いや呪いばかりになりがちです。それは例えば人の振る舞いだったり、秋の訪れにさえも。
しかしながら、harumienが晴美園の名を持つようにバカボンのパパが語り、モンティパイソンが歌ったように晴れ晴れと美しくこれでいいのだと思えるbright sideを往くことが「実りある秋」の見つかる立ち居振舞いのように思います。
褪せ旧くなる自分自身のエイジングにも手入れすることで増す喜びがあるとするならば、この道を歩みゆくことなのかもしれません。
そんな思いに至る素晴らしい訪問でした。
よろしければ皆さまも。
「bright side is here(in you).」
流山すみずみ