お約束の自己紹介に月並みな挨拶。
テンプレート化されたやり取りを交わしながら、綺麗な木目が浮かぶテーブルの上に広げられたカフェメニューに目をやる。まじまじと見定めたい気持ちを抑えながら、メニュー越しに今日のアポの相手の様子を伺っていると人懐っこく屈託のない笑みを浮かべた彼から一つ質問が飛んできた。
「自分が大人の仲間入りをしたと思った瞬間っていつでした?」
初めてのデートというべきかアプリでマッチングしての初めて顔合わせの場でずいぶんと的外れな質問をする人がいるものだなとそのときは、拍子抜けしてしまった。
仕事内容と年収と転勤の可能性と家族構成(特に次男かどうか!!)をすぐに聞きたがる私も私で現金だとは思うけれども、大人の仲間入りだなんてデリカシーも無くオブラートに包み切らずに恋愛経験を伺おうとするのは、男の人特有の汚さのようなものだと思っていたから。でも彼から口をついた言葉は、さらに意表を突いた。
「僕の場合は、バイトした給料を初めてATMで下した時だったんですよね。」予想外のストレートは私を直撃し、目のやり場に困った私は思わず言葉に詰まって目線を上に上げる。ナチュラルさが売りのカフェの天井は高く、天井の無垢材の木目は私をあざ笑っているように見えてくる。木目に笑われる恥ずかしさから逃げるように天井から吊るされた照明の電源コードを目で追うと程なくして幾何学模様の真鍮製の照明器具に到着する。一瞬の視線の旅のゴール地点では、照明の傘から白熱電球のエジソンバルブのフィラメントがこうこうと輝いているものだから、遂には私の目は眩む。
「それは、何というか眩しいですね。」
そう眩しかったんだ。そういうことすら忘れてた。「眩しいっていうか、ギラギラだと思いません?結局働いてお金手に入れたときが大人なのかよみたいな。現金な話だって思いません?」
「まあ、現金かって言われたらATMの話よね、これは。ははは。」
何うまい事言ってるんだ。私は。
ただただ眩しくて彼のことをまじまじと見つめてしまう。
そして私が大人になったと思った瞬間はいつだったのかを思い出そうとする。恋愛だけでは無かった。働くだけでは無かった。お金だったんだろうか…。あれは何だったんだ?私も彼と同じだったんだろうか。高校生の頃、おおたかでバイトしたお給料を駅前のATMで初めて下したとき、私は何を思ったんだ?数年前の事なのに思い出せやしない。
わたしのATM
預金口座と財布の中のお金のことだけを考えれば良かったのは今は昔。ATMの重要性は5年程前と比較して決済方法の多様化、キャッシュレス決済の普及と相まってその重要性は相対的に低下しつつあります。駅前に各都市銀行の支店ができることは稀となり、発展著しい流山の街においてもその事実は大きくは変わりはありません。
そうは言っても子どもでもまた大人でもないティーンエイジャーにとっては、決済手段が限られることからバイトの給料日に向かうATMのありがたみは、今も昔もさして変わらないように思われます。
資産形成が高校の授業となる今となっては、ATM前で繰り広げられる悲喜こもごもも計画性の名の下にクレンジングされていく定めとは言え、そのドラマ性は今後もなお貨幣経済のプレイヤーたる私たちを惹きつけ続けていくことでしょう。
流山おおたかの森駅前ATM最短選手権開催のお知らせ
今日はそんなATMについてのお話です。
少し趣向を凝らして流山おおたかの森駅前でATM最短選手権を実施したのでその結果を取り上げます。これで急な入り用でも(口座に残高があればきっと)大丈夫です。たぶん。
まずはコタツの上で机上検討したものをgoogle MAP上に記載してみます。
この地図を検討のスタート地点として、ここから足を動かして実測した結果がどうなったかをドライブさせるところに好奇心の賜物が宿ってきます。
最短選手権を謳うにあたっては、基準点はつくばエクスプレスと東武野田線の交差する交点に鎮座し、おおたかの森を東西南北の4エリアに分かつおおたかの森の中心点となるモノリスこと何だかよくわかる案内板からの歩数(実測)とします。
第3位 72歩 セブン銀行ATM(TXおおたかの森駅構内)
最短選手権がつくばエクスプレスおおたかの森駅基準だったら、結果発表のドラムロールを鳴らすこともなくこの選手権を圧倒的近さでぶっちぎりで優勝していたのはTX流山おおたかの森駅構内にあるセブン銀行ATM。しかしながら今回のレギュレーションとなるおおたかの森のモノリスからは72歩で3位のランクインとなりました。それでも100歩を下回るのは立派と言えるでしょう。
駅構内のATMという特殊性からSUICA,PASMOの残高チャージに迫られるピンチな展開になっても駅構内からATMが使用できるすごいやつでなんですぜと言ったら、そのありがたみがわかろうものです。
しかしながらつくばエクスプレス流山おおたかの森駅構内では意外とその存在が知られていない気もします。駅構内での乗降客の進行ルートって結構ルーチン化されているでしょうから利用頻度が低そうなのが珠に傷です。使用頻度が少なければ撤去されかねませんから、TXユーザーの方は計画的なご利用の程を。野田線オンリーユーザーの方は「へぇ~」の生返事でOKです。ATM使おうと思ったら、入場料まで取られるなんてもったいないですし、次の第2位があるから大丈夫です。
第2位 39歩 セブン銀行ATM(東武野田線改札脇)
選手権開催にあたって、おおたかの森駅のコンコースが頭の中に浮かぶ方にとって本命候補であっただろうATMが東武野田線(東武アーバンパークライン)流山おおたかの森改札脇のセブン銀行ATMです。
その距離はモノリスから39歩という近さです。第2位ともなると50歩切ってくる非常にハイレベルな争いとなってきます。
TX改札を降りて野田線に乗り換えるおおたか駅ユーザーにとっては、ベストな位置取りにあります。おおたかの森SCで買い物をしようと思って南口へ出ようとする寸前、ATMの筐体が「あんたお金は持ってるのかい?」と老婆心ながら囁く世話役おばさんのようなやさしさすら感じられます。
筐体上にある赤い背景に白抜き文字のATMの看板の略が「A(あるの?)T(たくさん?)M(マネー?)」の問いかけに見えてきたならば、素直にその世話になるのもまた大人らしさかもしれません。
ATM
Automatic Teller Machineの略。「現金自動預け払い機」のこと。紙幣、硬貨、通帳、磁気カード、ICカードの受入口、支払口を備え、金融機関、貸金業者などが提供するサービスを取引する機械。銀行に併設されているほか、小売店や公共施設などに設置されている。現金の引出と残高照会だけを行う機器は、「現金自動支払い機(CD機、キャッシュディスペンサー)」と呼ばれるが、CD機を含めて「ATM」と呼称される場合が多い。
ATMと入出金管理などを行う中継コンピューターを専用回線でつなぎ、その中継コンピューターを顧客の口座の動きをリアルタイムで登録する銀行の勘定システムとつなぐ。
ATMの基本的な取扱業務は、預け入れ、引き出し、振り込み、振替、残高照会、通帳記入・繰越などである。預り金、積立配当金、据置祝金・保険金、保険ファンドなどの普通預金以外の引き出しもできる。また、金融機関によって取り扱いが異なるが、宝くじの購入、カードローンの申し込み、電子マネーのチャージなどもできる。
銀行のビジネスモデルは、預金を集め、それを融資して利益を上げるのが一般的だが、セブン銀行の事業はATMによる決済専業銀行という新しいビジネスモデルだ。主な収益源は、ATMの提携先金融機関や利用者からの利用手数料に特化している。ATMはセブン&アイ・ホールディングスのグループ各店舗、野村證券の店舗に設置されている。
大塚商会WEBより引用
第1位 29歩 りそな銀行ATM(つくばエクスプレス改札脇)
映えある第1位はりそな銀行ATM(りそなクイックロビー)です。
注目の近さはモノリスから29歩と優勝にふさわしい30歩切りという実力者です。
「そんなんあったっけ?」派の人がいたら、「Me too.」でした。だけどもだけど確かにいるのです。
つくばエクスプレス券売機脇にそれはそれは静かに鎮座しています。セブン銀行ATM勢が駅前に出店してくる前、おおたかの森駅の黎明期からこの街の発展ぶりを駅の片隅から見守り続けてきた老舗ATMとなります。
りそな銀行のユーザーに限らず都市銀行ユーザーであれば、都市銀行の相互接続ネットワーク「BANCS」によりATMを使用することができますので、場所を憶えておいて損は無いでしょう。しかしながら、BANCSによる提携銀行使用の場合は所定の手数料がかかることが多いですから、積極的な利用は無いかもしれませんね。
各銀行の口座優遇施策により特定ステージの場合にはコンビニ系ATMの手数料は月○回まで無料等とされていることも多いですから、モノリスから39歩歩ける方は、2位のセブン銀行の方が優遇を受けられる可能性があることも踏まえると利便性が高いかもしれません。
とするとおおたかの森ATM最短選手権としては、りそな銀行ATMの優勝で幕を閉じるわけですけれども実質的な利便性を考えると、あのミームでオチが付く形となりそうですね。
「2位じゃダメなんですか。」って
おや、お後がよろしいようで。