ヂンガラ餅神事、そのお餅、その気持ち

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去る1月12日(日)流山が千葉に誇る奇祭、ヂンガラ餅神事が三輪野山の茂呂神社にて行われました。
ヂンガラ餅神事は、上半身裸の男衆が掛け声を挙げながら餅を奪い合い、その餅が割れた時の割れ目からその年の農作物の出来の吉凶を占う祭事です。流山市指定無形文化財でもあり、また流山市内の新春の訪れを告げる風物詩ともなっています。

流山の奇祭、裸祭り ヂンガラ餅神事は本日開催(2020/01/12)
本日、1月12日(日)13:00-15:00の予定で流山の奇祭ヂンガラ餅神事が行われます。 流山市内で断トツの奇祭、裸祭りですので今日暇しているNot成人の方は、眼前に男衆の熱気を収めに一つ祭りの見物へでかけるてみるのもよいでしょう。 餅の...

ヂンガラ餅神事には千葉テレビから千葉日報までそうそうたる千葉のメディア取材が入っていたことから全千葉の注目を集めていたことは言うに及びません。その注目ぶりには千葉のメディアのみならず産経新聞や朝日新聞といった有名全国紙にも掲載されていたほどですから、流山市内の話題としては結構珍しい「Level:Across the Edo River 」(江戸川またぎ)のレベルであったと言えるでしょう。

江戸川をまたぐほどの注目ぶりは、それだけ多くの方がヂンガラ餅の割れ方の行方に注目していたことを示しています。かくいうローカルブログメディアおじさんの私でさえもヂンガラ餅神事の取材(=見物)に行く程でしたから今日はここに一つ、そのレポートをお届けしたいと思います。

ヂンガラ餅神事 儀式の催行

日曜日の昼下がり、境内に集まった約300人の見物人が神事の儀式を囲む中、神前へお供え物の奉納が始まります。八種類の神酒、八升の餅と八種類の野菜の煮物と八にちなんだ供えものが次々に社殿内へと運ばれていきます。

神前へ供え物の奉納

 

神前内で祝詞ととトウ渡しという5軒づつの今年と来年の当番の引継ぎが行われた後、社殿に敷かれた畳を剥がし、参道の石畳には敷物が広げられていきます。それらはすべて戦いの舞台の準備のため。にわかに境内が慌ただしくなり始めると場をつつむ空気の雰囲気が変わり、祭りの時が近いことを肌で感じます。

勇壮な男衆

戦場の舞台が整うと、皷と錫杖の音を合図にヂンガラ餅神事の主役となる男衆が参道へ現れます。境内に押し詰めた観客たちは今か今かと待ちわびた男衆に向けて祝いの花びら撒いて入場を盛り立てます。

 

男衆の花道

 

それは男たちにとって文字通りの花道となり、戦いに赴くプロレスラーのような決意に満ちた眼差しに「やるかやられるか」の祭りへの決意が、そして真剣さが溢れ出します。

 

男たちを花びらで出迎える。

男たちが羽織を脱ぎ上半身裸になると、周囲の期待は一気に熱を帯びます。

その時は近い

そしてその中の熱が沸点を迎えた時、神殿の宮司から鏡餅が投げ入れられ、ヂンガラ餅祭事が始まります。

始まりは神殿内。「ワッセ!ワッセ!」の掛け声の中、男たちがその鏡餅を奪い合い、へし合うその姿は勇壮で血がたぎります。神殿の中を所狭しと右に左に行き交いながら、その餅の行く手が次々に変わっていくと見物客も歓声を上げて祭のときを盛り上げます。

祭りの華は花道で

勇んだ男衆は、神殿の中だけでは狭くてたまらんぜと、参道の花道へと躍り出てきます。餅を奪った男が参道に現れると境内のボルテージは更に上がります。「頑張れ!負けるな!」「やれーっ」「うおおぉ」言葉にならない言葉が境内を包んでいきます。

 

祭りの華

餅を奪った男は、してやったりの表情で追手をなぎ倒し、奪われた男たちは餅を奪い返そうと追いかけます。
この光景なんだか最近見たなと思ったらあれですね。ラグビー日本代表。本気のジャッカル、本気のトライ。ただそこにパスはない。すみませんね餅取りなもんで。

そんな祭りの最中、時折笑みのこぼれる男たちの姿を見ていると「ああ、あのおじさんも昔はこどもだったのだ!」という思いが沸いてきます。大の大人たちが鬼ごっこのような餅取りに「ワッキャウフフ」しながらどこまでも純粋に祭りを楽しんでいるようにも見えてくるのです。その姿を見れただけでも、そしてその気持ちが沸いてくるだけでも、ヂンガラ餅を見に来た甲斐があって、とても幸せな気分になってきます。

男が!

餅を!!

取る祭り!!!

餅の持ち手は奪い合いの中で目まぐるしく変わり、またその舞台も神殿内と花道を丁度いい具合に行ったりきたりします。大いなる意志(=おやくそく)の存在を伺わせる場面もあるもののそれはそれでご愛嬌。ヂンガラ餅神事は、血の匂いのするような猛々しいガチンコケンカを見せる祭りではなく、大の大人の真剣餅取り勝負の中に「本気であることの楽しさ」を示すことにこそ価値がある稀有な祭りなのですから。

男たちが「戻ろう。戻ろう。戻ろう。戻ろう。戻ろう。」といったん社殿に戻ろうとする雰囲気を醸したにもかかわらず

観客の「がんばれ がんばれ」の声に「もうちょい場外で頑張る?」的な雰囲気が流れたり。これはこれでご愛敬ですね。

祭りの最後、ついに餅が割れるときを迎えると一体には安堵が訪れます。
そしてすぐに宮司が餅の割れ目から吉凶を占いその結果を皆の前で発表します。
皆が固唾を飲んで見守る中、発表された言葉は、

「今年も豊作間違いなしでございます。」

今年「も」

「も」と発表された際、「今年なのかよ!」と爆笑しながら突っ込んでた見物人がいたことを間違いない事実であることをお伝えします。それを踏まえ各紙の掲載内容を見ると、「も」を上手に報じた千葉テレビの報道に花丸を。「は」と報じた朝日新聞にはニュアンスの妙をできればもう一度勉強して頂けたらと思います。

豊作の知らせに市内の農業関係者は、ほっと胸をなでおろしたことでしょう。新春早々幸先の良い知らせです。
これだけの神事を催行することができたのは、ヂンガラ餅保存会の皆さまの力添えがあったからこそだと思いますし、今年の秋の実りを導いたであろう男たちの働きにこの場を借りて感謝いたします。

何よりも男たちの本気であることの楽しさが垣間見えますのでご興味のある方は、是非一度肌で味わって頂きたいお祭りです。
裸祭りで男たちが本気であることは垣間見えますけれども男たちのの大事な所は垣間見えませんので放送コード的な心配はもちろん無用です。

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