2024.11.21
夜、街は霧に包まれる。
地表からの水蒸気が霧のヴェールを濃くしていく中、空にはオリオンの三つ星が瞬いているのがはっきり見える。
それはまるで目の前だけがぼやけていて、遠い先は見渡せるといったふうで老眼でも疑いたくなる不思議な気分だった。
夜のランで訪れた三郷流山橋は、吉本ばななの小説キッチンの短編ムーンライト・シャドウを思わせる光景が広がっていた。
それは橋の上の霧の光景だ。
眼前の光景がフックとなって呼び起こされる記憶や読書体験があることをただただ嬉しく思う。
些細なきっかけの一つ一つが幾層のレイヤーとなって私の感覚となり、霧中に記憶の中の三つ星を見せてくれたのだから。