2021.11.27 晴れ
下り坂
少しずつ少しずつ11月下旬から取り掛かり始めた今年の大掃除と大処分市は、早くも1回目の粗大ごみを車にとっとと積んで流山クリーンセンターへ向かう程には順調に進んでいる。
今までもったいないけど売るほどでもないと思っていたモノも今年始めたメルカリでへの出品であらかた売ることができたのは、今年らしい新たなトピックスになった。
「今ならミニマリストにだって共感できるかも。」手に入れた売上と手放した品々と引き換えに片づいたスペースと充実さを伝える汗を拭いながら、ハンドルを握る車は間もなく流山警察署前の下り坂へと差し掛かる。
やり切った感のある軽やかな気持ちに自ずと車は制限速度ギリギリのスピードまで加速し、警察署前の少し長い下り坂を束の間のジェットコースターになぞらえる。
警察署まであと20mと差し掛かった下り坂の終わり際、そんなノリノリな気分に水を差すように粗大ゴミを積んだ後部座席から不穏な音が聞こえてくる。
「ガッ」「ガガッ」
「この街を代表する坂とはいえ、この下り坂の斜度で根を上げちゃうなんて粗大ごみちゃんたち、ウブだね。この道初めて?」なんてそれがたとえ早口だとしても当然言える間もなく、後部座席からのSOSは確かにこれから来るだろう危険を知らせ、瞬きの間に落下音へと変わる。
「ガシャン」「コロコロコロ」
「ああ…。」
一声出す間にも車は軽やかに警察署の前を過ぎる。「車は急に止まれない。昔の標語は含蓄があっていいよね。」と思い浮かべば、後部座席の大惨事を伺うルーフミラー越しの俺の顔がコクリとうなづく。
さすが俺だな。わかってる。
上り坂
進むべき道は下り坂が終わり、谷底の警察署前を過ぎて上り坂が始まろうとしている。底まで下ったなら後は、あとは上るだけ。
「ホント人生そうあってほしいものよね。」とつぶやいてみても、ルーフミラー越しの俺なんて見てる暇はない。
それも俺だな。仕方ない。
「ああ。」
「ゴロゴロ」「カラカラ」
転がるのは多分、収納家具を崩したときの鉄パイプだなと悟り、そのカラカラから転がっているパイプの数を探ろうにも運転中に後ろを向きようもなく早々に諦める。
「この街を代表する坂とは言え、この上り坂の斜度で根をあげちゃったのは俺の方。やわね。この道何度目よ?」なんてつぶやくのは、茂呂神社前の信号が赤に変わって前の車が詰まり始め、気持ちを落ち着かせる時間ができたから。そしてゆっくり緩やかに坂を上り始めた車の傾きが変わった頃合い、唐突にカラカラ音が止む。
「カッ。」「カラッ。」
茂呂神社前まで20mと差し掛かった上り坂の終わり際、「神は細部に宿る云いますやん」と己の粗大ごみの雑な積み込みに悔い改めかけた頃、コロコロカラカラ元だったっぽい後部座席を転がっていた収納家具の鉄パイプは、上り坂の車の傾きに転がる方向を変え、果たして収まりどころを見つけその音をピタリと止めた。
戦いの終わりを感じさえるような安らかな気持ちに自ずと車は目前の赤信号に合わせて減速し、茂呂神社前の上り坂の終わりを束の間の休息地になぞらえて信号待ちの停車をする。
「今ならオプティミストにだって共感できるかも。」手に入れた静寂と手放した不運と引き換えにまだちらばった後部座席にクリーンセンターでの汗を予感しながら、ハンドルを握る車は間もなく流山消防署前の下り坂へと差し掛かる。
今までめんどくさいけど片付けるほどでもないと思っていたモノも今年始めた早めのお掃除で潮目を変えることができたのは、今年らしい新たなトピックスになった。
こうして11月下旬から取り掛かり始めた今年の大掃除と大処分市は、早くも1回目の粗大ごみを車にとっとと積んで流山クリーンセンターへ向かう程には(何とか)順調に進んでいる。