世の中とは不思議なことの一つに常識はどこで作られるかというものがあります。
こと子育てにおいては、その家独自のカラーが存分に出てますし、そのカラーは子どもに受け継がれていくこともまた多いものです。
つまるところその家の常識は、「その家の数だけある」というとことにもなってきます。
その家のカラーやスタンダードというものは、社会学の今風のトレンドで言えば、文化資本やハビトゥスという言葉でざっくりと表現することができるでしょうか。その家の常識がどこで世の中の常識として共有されていくかは専門家の研究に任せておくとして、今日はその家のカラー特に服装についてのお気楽なお話です。
子育てにおける服装あるある
こどもが生まれたばかりの頃にありがちなその家のカラーとしては、「キャラものに頼らないお洒落な子育て」なんて方針を上げられる方もいらっしゃるでしょうか。
この方針を掲げられる方を惹きつけるキーワードで言えば、ミニマルでシンプルでナチュラルな北欧系。家の中はお洒落なインテリアに囲まれ、センスを感じさせる(と言わせたい)こだわりてんこ盛りなやつです。例えばトイザらスよりボーネルンド的な志向といったらわかりやすいでしょうか。
子ども2人を育ている私の経験から申し上げれば、この方針はだいたい3歳になる頃に「アンパンマン」にぶっ壊されますので、0歳児から2歳前半のお子さんがいらっしゃって、かつこのような方針をお立てになった方は、ご覚悟くださいませ。
抗うならば是非、「はっひふへほ~」の声を挙げてアンパンマンに立ち向かってみて頂けたらと思いますけれども、まあもれなくと空の彼方に理想が飛ばされていくのもまた子育てにおける通過儀礼みたいなものですから、それもまたお気になさらずに。
ユニクロ着ない派とは
同じようにその家の服装においても様々なカラーがあり、服装にはその家の常識が垣間見える所があります。先日、記事にしたような郊外暮らしにおけるボーダーのカットソーの謎の多さであったり、ジャージ暮らしが醸し出す北関東感というもの例に挙げられるでしょうか。
ZARAやH&Mの海外勢からユニクロやG.U.しまむらなど国内勢を含めたファストファッションの隆盛は、庶民を一定レベルのお洒落さんへと仕立てあげてくれた部分と、DCブランドを全力で殺した部分で功罪があります。
その功罪の一つを言えば「ユニクロ着ない派」という一派が形作られたことも挙げられるでしょう。端的に言えば、服装にお金を掛けられる比較的ハイソな方や、独身でかつ実家住みでお金が自由になりがちな若者が、ユニクロのようなファストファッションを「ダサい安物」とみなし、庶民との違いを明確にするためにユニクロを着ない(代わりに費用的に高いブランドものを志向する)といったものです。(主な生息地は世田谷や目黒といった高級住宅地)
ユニクロ着ない派inバースデイ
しかしながらこの「ユニクロ着ない派」は、流山くんだりの郊外までやってくるると別の意味を持ち始めているのかもしれないと、先日、家族でバースデイ西平井店を訪れた際に思うところがありました。
バースデイはファストファッションで有名な「しまむら」が経営する子ども服向け店舗の名称となっています。バースデイ西平井店は2016年12月1日にオープンし、2018年3月現在、店内はまだまだ新しく綺麗で、子どもの増える流山の子供服需要を受け止める貴重な店舗のポジションを確立しています。
店内の紹介では、Baby Child Maternity Toy Interior Bedclothes…の表記があり、新生児、乳幼児、児童の子供服からマタニティ服、簡易的なおもちゃ、インテリア、ベッド周りの製品が揃います。このあたり、アカチャンホンポや西松屋と言った赤ちゃん向け店舗と同じような使い方ができるでしょう。バースデイは西松屋との互換性が高いイメージではありますけれども、しまむらの店舗運営で培ったファストファッション志向のオシャレさは、西松屋の一歩上を行く印象があります。
注目に値するのはショップ内のブランドをいくつか分けて、そのファッションカラーをより明確に区別しているところが挙げられます。
例えば、北欧、ナチュラル好きにヒットしそうなUTAKATADECOの取り扱いもその一つです。ロゴやイラストはもちろん、服そのものもに上質なキュートさと結構なクオリティが光ります。店舗内のブランドですからこのUTAKATADECO、手に入るのはバースデイだけなんです。
他にも店舗限定のブランドはいくつかあります。上の写真は、「上品でかわいいをテーマにするガーリースタイル」AnkAnk
活発でありながら、ポイントでガーリーに振ってくるバランス感覚はなかなか上手いと思います。スウェット一つとってもこれだけの質になってくると、今時の子どもがなぜオシャレでいられるかの理由が垣間見えてきます。
こちらは、別ラインのfutafuta
ブランドコンセプトは、「絵本から飛び出したような元気で楽しい北欧ナチュラルスタイル」
花柄の見せ方や柄の使い方のうまさは、ミナペルホネン辺りのブランドが好きなお母さんも取り込まれてしまうかもしれませんね。
「手作りみたいな優しさのほんのりフェミニンなスタイル」conoco
手作りみたいなレースが付いているあたり、すごく手作りみたいでした。
他にもポップ系、キャラモノであったり、郊外休日の定番服「ボーダー」などももちろん取り扱いがあります。
バースデイ店内の取扱いの服のそれぞれにブランド、ラインを冠していることにより、ラインによるカラーはかなり明確に区分されています。そのおかげもあって、店舗内に複数のブランドが入っているかのような調和を見せ、売り場の雑多さを感じさせずに他のファストファッションブランドと比べて非常に幅の広いスタイルの提案を実現に成功しているように感じられます。
新しいおしゃれの常識。バースデイ着る派の誕生
驚きなのが、これらの服の金額がしまむらプライスであるということ。ほとんどの洋服が安ければ数百円、1,000円前後を中心価格帯に高くても2,000円代で購入できてしまうところです。
デザイン性が高く様々なラインがある中から自分の気に入ったラインをトータルで揃えていってもユニクロより安いということを実現してしまっていることは、驚異という他ありません。
そしてこのバースデイの存在は、新たな意味での「ユニクロ着ない派」=「バースデイ着る派」誕生を示唆しているように感じます。
ノームコアといってもいい究極のノーマル志向のユニクロに対して、各種ラインによる幅広いスタイルの提案とファッション性を取り入れつつさらにコストパフォーマンでさえも「ユニクロ」を上回ることは、同じファストファッション内においても地殻変動が始まっていることを実感することとなりました。
それは、ユニクロを「ダサい安物」としてではなく「ダサくて高い」と思う層が生まれつつあるということでもあり、この地殻変動は時流の一つになっていくように感じられます。所有する服の9割がユニクロのユニクロ大好きおじさんの私もまたこの新しいお洒落の常識「バースデイ着る派」の動向をキャッチアップしていくとしましょう。
しまむらやサンキのメンズは野暮ったいイメージが先行していましたけれどもキッズ服における下剋上と言わんばかりのバースデイの頑張りが、本家「しまむら」のメンズファッションに波及することもあるかもしれません。
「とりあえずジャージ」(とりジャー)と言い出さずに済むくらいにはお洒落の矜持を維持しつつ、しまむら本体がよりお洒落になることも期待をして待ちたいと思います。バースデイが起こした旋風が私を新しい「ユニクロ着ない派」へといざなう日を偏見を持たずフラットに待ってみようと思います。
バースデイ西平井店
https://www.shimamura.gr.jp/shop/map_detail_3043.html